空き家を持っている人は、空き家対策特別措置法について把握しておく必要があります。ここでは、空き家対策特別措置法の立法目的や空き家対策特別措置法が及ぼす影響、固定資産税の特例が適用されない場合についてご紹介しましょう。
空き家対策特別措置法はどのような目的か?
まずは空き家対策特別措置法が制定された理由を、現代の日本に発生している問題を背景に考えてみましょう。
空き家は周囲に危険や不快感などを与える
ビルの古くなった看板が落ちて大怪我をしたトラブルが以前報道されたことがあったように、必ず建物は老朽化してきます。これ以外にも、歩道に外壁が落ちて、被害に通行している人が遭うような場合もありました。個人が所有している空き家が同じような被害を発生させるとは必ずしも言えないかもしれませんが、老朽化したにより悪影響を周りや付近に及ぼすことは十分に考えられます。
例えば、空き家は次のような悪影響などがあります。
- ・主な構造体が腐って全体が傾くと、倒れる被害がある
- ・外壁・屋根の剝離は、飛散する被害がある
- ・門・塀、設備の老朽化には、落ちたり、倒れたりする危険性がある
このような悪影響は空き家が古くなるほど多くなることを考慮すれば、対策が古いものほど必要になります。
将来的に空き家は多くなると考えられている
空き家問題は現在でも重視されていますが、将来的には対策強化がより一層要求されており、背景としては空き家の年々の増加が挙げられます。この理由としては、少子高齢化以外に次のようなことが考えられます。
- ・人口が少なくなり、2019年で世帯数がピークになる
- ・介護施設を使う
- ・固定資産税は建物があると優遇される
- ・新築物件の方が高いニーズがある
- ・解体するための費用がかかる
- ・価値が中古物件は低い
自治体の空き家対策を法律でサポート
空き家がその周囲に悪影響を与えていること事実が明確になり、しかも空き家が多くなることを考えれば、空き家対策が国として必要になってきました。そのため、法的根拠を自治体の空き家対策に与えるために、特別措置法を制定しました。
空き家対策特別措置法の場合は、基本方針を示したもので、自治体が実施する施策までは具体的に決めていません。しかし、法律を制定したことによって、確かに対策をしやすくなったでしょう。また、空き家をそのままにしておくことを防ぐ税制上の措置が含まれています。
空き家対策特別措置法では、条文で次のような目的を明記しています。
- ・地域の住民の身体、生命、財産を守る
- ・地域の住民の生活環境の安全を保つ
- ・空き家などの利用を促す
- ・空き家などについての施策を計画的かつ総合的に推し進める
- ・地域の振興と公共の福祉の増進に貢献する
国が基本方針をこのような目的を達成するために策定し、自治体が空き家などの対策計画の立案とこれ以外の空き家などについての施策を推し進めるための事項を決めました。
空き家対策特別措置法が及ぼす影響
全国にある空き家は、空き家対策特別措置法が施行されても一斉にすぐに強制的に撤去されることはないでしょう。というのは、空き家は持主の財産であるため、撤去を勝手にするのは財産権を侵すためです。では、空き家対策として自治体はどのようなことを行うのでしょうか?
空き家を調べて現況を掴む
自治体がどのようなことをする場合でも、空き家の現況を掴まないと措置や対策を行うこともできません。そのため、自治体はまず空き家と持主を掴むことが必要であるため、該当の空き家にいて調査を行ったり、情報の提供を要求したりできると定められています。
その上で、自治体は空き家として対策が必要なものを選ぶようになり、持主に対して管理を適切に行うことを促すために、助言や情報の提供や必要なその他のサポートを行います。そして「特定空家等」という、対策が特に必要な空き家として指定されると措置が講じられます。
解体を通告したり、強制的に対処したりできる
空き家対策特別措置法の場合は、空き家が保安上著しく危険性を伴う恐れがある場合、もしくは衛生上著しく有害になる恐れがある場合について強制的に対処できると定められました。しかし、いきなり強制的に対処できるということでなく、手順としては次のようになります。
- ・改善への指導と助言
- ・改善しないと勧告
- ・勧告でも改善しないと命令
- ・命令でも改善しないと強制的な対処
固定資産税の特例が適用されない
自治体から特定空家等に対して改善勧告があれば、固定資産税の特例が土地について適用されなくなり、最大で固定資産税が4.2倍になります。なお、住宅用の土地の固定資産税の特例は次のようになっています。
- ・土地の面積が200㎡までの部分は、固定資産税が1/6に軽減、都市計画税が1/3に軽減
- ・土地の面積が200㎡超の部分は、固定資産税が1/3に軽減、都市計画税が2/3に軽減
なお、200㎡超の部分は、上限が床面積の10倍になります。しかし、土地の固定資産税が高くなって相当建物の固定資産税が高いと、空き家を使用していない場合は、解体する方が固定資産税がトータル的に安くなることもあります。
不動産市場に空き家対策はどのような影響を及ぼすか?
空き家対策が自治体で進めば、持ち主は対策を練る必要があります。対策の対象は空き家の全てではありませんが、賃貸や売買のために、不動産市場に解体した土地や空き家が流れることは十分に想定できます。不動産として塩漬けになっていたものが流動的になり、解体する際などもお金が掛かるため、活性化するようになります。また、空き家を利用するケースが多くなると地域にも良い結果が生まれるでしょう。
一方、不動産市場で空き家物件が多くなっても、不動産を買う人が多くなるということではないため、価格が供給過剰によって低下するとも言われています。影響がどの程度あるかははっきりしませんが、需給がアンバランスになる可能性はあります。
空き家を持っている人としては、価格が下がるのはマイナスになり、さらに同じ時期に人が多くない地域で流通すると周り相場に大きな影響を与えるでしょう。その結果、家を持っている人も資産価値が低下する影響を間接的に受けてしまうことがあります。
固定資産税の特例が適用されない
「特定空家等」に空き家対策特別措置法によって指定されると、空き家を持っている人は自治体から空き家の修繕や撤去や、空き家の周りの立木竹の伐採などの環境の美化を実施するように助言・指導されます。空き家の状態がそれでも改善されなければ、勧告されます。勧告されてしまうと、固定資産税の特例が適用されなくなり、固定資産税が多くなります。
空き家が多くなった理由としては、固定資産税の特例があると言われています。固定資産税の特例というのは、固定資産税が減額されるというものです。この特例措置は、対象が現在ある住宅になり、空き家を壊して更地にすると対象にはなりません。
この特例措置があったことによって、空き家として管理されていないものが多くなったと考えられています。しかし、空き家を管理しないでそのままにしておくことは、空き家対策特別措置法が制定されたことによって許されなくなりました。
先にご紹介したように、自治体からの指導に従わない場合は勧告され、固定資産税の特例がこの時点で適用されなくなります。これにより課せられる税金が多くなるため、空き家を持っている人は空き家の修繕や解体、あるいは売却など、空き家を利用する方法を検討しておくことが必要です。