不動産を売却して売却益が出た場合、譲渡所得税を納付する必要があります。マイホームを売却した場合には、この譲渡所得税に軽減税率を適用できることがあります。どういった要件を満たしていれば、軽減税率を使って計算できるのでしょうか。調べてみました。
譲渡所得税の軽減税率
自宅として使用していたマイホームを売却した際に、一定の要件を満たしている場合、5年以上所有していた不動産の売却の際に適用される、長期譲渡所得税率の15%よりもお得な軽減税率で計算することができます。
軽減税率
軽減税率は、課税対象となる長期譲渡所得金額によって2通りあります。
課税長期譲渡所得金額が6000万円以下の場合:10%
課税長期譲渡所得金額が6000万円を超える場合:
(課税長期譲渡所得金額-6000万円)×15%+600万円
課税長期譲渡所得金額は、売却による収入金額から不動産の取得費用と譲渡費用、特別控除額を引いて出します。軽減税率を適用できる事例の場合、マイホームの特別控除3000万円も受けることができます。
軽減税率が使えればこんなにお得
軽減税率を適用した場合と適用しない場合、それぞれの譲渡所得税金額を比較してみましょう。
特別控除を引く前の譲渡所得金額が5800万円の場合
・軽減税率を適用できるなら、まず3000万円の特別控除を引いた2800万円が課税長期譲渡所得金額となり、10%の税率で計算すると、譲渡所得税額は280万円となります。
・軽減税率も特別控除も適用できない場合、長期譲渡所得税率は15%、5800万円×15%で、870万円の譲渡所得税を納付することになります。
特別控除を引く前の譲渡所得金額が9800万円の場合
・軽減税率を適用できるなら、まず3000万円の特別控除を引いた6800万円が課税長期譲渡所得金額となります。6000万円を超える場合の計算式を適用すると、(6800万円-6000万円)×15%+600万円で、譲渡所得税額は720万円となります。
・軽減税率も特別控除も適用できない場合、長期譲渡所得税率は15%、9800万円×15%で、1470万円の譲渡所得税を納付することになります。
軽減税率を適用できる要件
とてもお得な軽減税率を適用するには、以下の5つの要件すべてに該当していなくてはなりません。
1. 日本国内にあるマイホームを売却
日本国内にある自宅、居住用に使用している家屋や家屋がある敷地を売却していること。
現在住んでいない場合は、住まなくなった日から3年経った日が属する年の12月31日までに売却していること。もし、住まなくなってから人に貸していた場合も、この期間内に売却すれば、軽減税率の適用を受けられます。
家屋が、地震や洪水といった災害によってなくなってしまった場合は、その敷地だけを売却した場合でも可能。ただし、住まなくなった日から3年経った日が属する年の12月31日までに売却すること。
マイホームだった家屋を取り壊した場合には、以下の3つの要件をすべて満たしている必要があります。
①取り壊した家屋とその敷地を、家屋を取り壊した日が属する年の1月1日現在で10年以上所有していたこと。
②家屋を取り壊して1年以内に敷地の譲渡契約を結び、かつ、取り壊す前の家屋に住まなくなった日から3年経った日が属する年の12月31日までに売却すること。
③家屋を取り壊した後、譲渡契約を結ぶまでの間、その敷地を貸して、駐車場といった他の目的で使っていないこと。
2. 10年以上所有を継続
売却した年の1月1日現在で、売却した家屋や敷地を10年以上所有していること。
3. 以前に特例措置を受けていないこと
売却した年の前年とその前の年に、同じ特例措置を受けていないこと。
4. 他の特例措置を受けていないこと
売却した家屋や敷地に関して、マイホームの買換えや交換の特例といった他の特例を適用していないこと。ただし、この特例措置には、マイホームを売却した際に受けられる3000万円の特別控除の特例は含まれていません。3000万円の特別控除と軽減税率の特例は、一緒に適用できます。
5. 売却先が特別な関係がある人ではないこと
マイホームだった家屋や敷地を売却した相手が、親子や夫婦といった特別の関係がある人の場合、軽減税率は適用されません。親子や夫婦といった家族関係だけでなく、生計を共にしている親族や内縁関係にある人に売却した場合も、特別な関係がある人とみなされます。個人だけでなく、売り手と特殊な関係がある法人も含まれます。
他の特例措置との関連
売却した家屋や敷地に関して、マイホームの買換えや交換の特例といった他の特例を適用していないこと。ただし、この特例措置には、マイホームを売却した際に受けられる3000万円の特別控除の特例は含まれていません。3000万円の特別控除と軽減税率の特例は、一緒に適用できます。