家を売却する際に、税金がかかる事をご存知ですか?
「え?家って、売る時にも税金取られるの?」と驚く方も多いのではないでしょうか。
そう、不動産というのは、買う時もそうですが、売却時にも、実は結構大きな額を取られてしまう事もあるんです。
家を売却して新たな物件の購入費用に当てたり、住み替えたりする場合、この税金を算段に入れておかないと、以後の資金計画が狂ってしまう場合もあるかもしれません。
一体、どのような場合に、どんな税金がかかるのでしょうか。
不動産売却の際にかかる「3つ」の税金とは?
まず最初にご説明してしまうと、私たちが家や土地などを売却する際には、以下の3種類の税金が課せられます。
・譲渡所得税
・住民税
・印紙税
このうち、譲渡所得税と住民税税は、家を売却した際に「利益が出た場合のみ」支払う税金となっています。この記事では、この3つの税金に関して、ご説明させていただきます。
不動産売却における譲渡所得税・住民税
基本的に、人が収益を得た場合は、その所得(収益)に対して所得税・住民税といった税金が課せられます。勤め人の場合は給与所得、自営業者の場合は事業所得などに分類されており、一般的にそれらを所得税といいますが、不動産を売却した際の所得税は「譲渡所得税」と定義されています。譲渡所得税は分離課税となっており、給与所得や事業所得と合算して算出されるのではなく、単独区分にて課税されます。
この譲渡所得税の特徴として、売却金額にそのまま課税されるというわけではないということが挙げられ、実は対象となる不動産を売却した際、それを購入した時の価格(と、購入時、売却時の諸費用の合算)を上回っていなければ、課税されないのです。つまり、譲渡所得税とは「家を売って儲かった場合にのみかかる税金」ということです。譲渡所得税は、譲渡所得(売却益)×税率で求めることができます。
このうち、譲渡所得(売却益)は、「売却金額(1)購入金額(2)諸費用(3)-特別控除額(4)」で求めます。
(1)の売却金額とは、その名の通り不動産の売却をした際に得られる収入のことです。
(2)の購入金額とは、不動産を「購入したときの金額」ではなく、売却した時点での不動産の価値であることが注意です。
「売却した時点での不動産価値」とはどういうことかというと、建物は建築されてから期間が経つに従い、消耗し価値が低減されていきますから、その価値の低減分を「減価償却費」として割り引き、その時点での建物価値を算出するというわけです。建物の価値が低減していく指標として使われる「法定耐用年数」は構造別に決められており、木造の構造物耐用年数は22年、重量鉄骨は34年、RC構造のものは47年と決まっていますので、これらの耐用年数の償却率を国税庁の「減価償却資産の償却率表」に照らし合わせて計算します。ちなみに、親などから相続した不動産(土地・建物)の場合は、取得費が不明だというケースもあるかもしれません。その場合においては、譲渡価格の5%を取得費とすることになっています。
(3)の諸費用とは、例えば、「不動産会社への仲介手数料」、購入時の登録免許税・印紙税・不動産取得税の各種税金、土地の造成作業にかかる費用、古家の解体作業量、測量代金などの事です。
(4)の特別控除とは、「居住用財産の譲渡所得の特別控除」という特例のことで、3000万円までの非課税枠があります。
ということは…つまり、実は「家を売って利益が出ても、3000万円以下の儲けであれば、譲渡所得税はかからない」わけです。居住用不動産を売却するという事は、普通は、次にどこか別の住宅へ移り住むという事ですから、「税金が高すぎて次の家が買えなくなってしまった」等の不幸な事態にならないようにする為の軽減措置なのです。ただし、注意点として、以下のようなことが挙げられます。
・この控除を受けられるのは、自分が住んでいた居宅を売る場合になりますが、今居住していなくとも、転居してから3年後の12月31日までに売却した場合は適用の対象となります。
・「売却した年の前年、前々年にこの特例を受けていないこと」、「売り手と買い手が親子や夫婦などの関係ではないこと」などの諸々の適用要件を満たす必要があります。
・「この特例を受けるためだけを目的として入居したと判断された家屋」、「一次的な目的で居住していたと判断された家屋」、「セカンドハウスや別荘のように、保養目的であったり趣味性の高い家屋」という場合、この特例の適用除外となってしまいます。
次に譲渡税における「税率」の話になります。譲渡税は、該当の建物を保有した期間によって、税率が変動することになっています。所有期間が5年以下の場合は、短期譲渡所得として39%(所得税・住民税)となっており、内訳としては、所得税が30%、住民税が9%、その他に、所得税に復興特別所得税の税率(2.1%)が乗せられた金額が、課せられます。所有期間が五年超の場合には、20%(所得税・住民税)となっております。内訳は、所得税が15%、住民税が5%、そして復興特別所得税です。
つまり、基本的には所有した期間が長ければ長いほど、売却した際の税率が下がるという仕組みになっています。なぜこのような税率になっているかというと、短期的な土地の売買で儲けを出す人、つまり土地転がしのような投機目的の人たちを排除するためということです。また、この「所有期間」ですが、「売却した年の1月1日時点」が基準となっており、注意しなければ短期譲渡所得という事で税金が課税されることもあるので気をつけましょう。譲渡税・住民税の説明・計算法としては以上になります。
印紙税
印紙税とは、印紙税法で決まっている「課税文書」にあたる取引文書を交わす際にかかる税金です。課税文書の作成者が納税者となり、納税額は契約金額によって変化します。不動産領域の書類では、「建築請負契約書」や、「不動産売買契約書」などの書類が課税文書にあたります。印紙税の納税方法は、対象の課税文書に、収入印紙を貼付するだけです。注意点として、貼り付けるだけではなく、消印(印鑑もしくは署名)が必要で、この作業がない場合は、納税した事にならないことになっています。なぜこのような処理をするかというと、使用履歴のある印紙を再利用されないようにするための措置です。
土地売却の場合においては、買い手と売り手の双方で売買契約書を作成する場合、どちらの書類にも印紙を貼り付けて印紙税を納税する必要がありますが、どちらか一方がコピーで保有する場合は、印紙税は原本の保有側のみでもokとなっています。なお、物理的な書面で契約したのではなく、インターネットを通じて電子的に契約書が発行された場合は、課税文書ではないため、印紙税は課税されません。ただし、その場合も、印刷したのちにそれを原本として使用した場合は課税対象の文書となってしまいます。
印紙を貼り忘れてしまった場合、契約書の効力がなくなってしまう、という事態にはなりませんが、納付予定の印紙代金の3倍にあたる額を「過怠税」として支払わなければいけません。自ら気づき調査を受ける前に申告すれば1,1倍という額で済みます。
まとめ
以上、不動産を売却する際にかかる税金について、ご説明させて頂きました。所得税などの仕組みは複雑で、税金の産出方法などが一見わかりづらいのですが、ざっくりいってしまえば、基本的には「売却して、3000万円ほどの儲けが出ていなければ、ほとんど税金はかからない」ということになります。
不動産は、売却するタイミングで税金が大きく変化しますので、慎重に計画を立てて行動しましょう。