普段買い物をする時には、少しでもきれいなものを選びますよね。だから、不動産を売る時にも、きれいにリフォームした住宅の方が、早く高く売れるだろう、と思われるかもしれません。不動産を売却する前にリフォームした方がいいのか、それとも必要ないのか、調べてみました。
買い手は中古住宅にシフト中?!
2018年4月に開かれた関係閣僚会議の月例経済報告等に関する資料に掲載された、「既存住宅を巡る現状」によると、日本では、既存住宅のストックが右肩上がりに増大しています。消費者の志向も変化していて、住宅購入時に、「新築・中古どちらでもよい」という層が2016年には37.8%となり、新築へのこだわりが減ってきているのがわかります。首都圏では、現実に中古マンション購入件数が、2017年には15691戸、2010年の10514戸に比べて、1.5倍の伸びを見せています。
中古住宅に動く理由
上記の資料によると、特に東京都心の中古住宅の成約件数が増加している背景には、大きく分けて、3つの理由が挙げられます。
①新築価格の高騰
東京都区部での新築マンションと中古マンションの成約価格を見ると、新築マンションは7千万円台になっているのに比べて、中古マンションであれば3千万円台から4千万円台で推移しています。
②共働き世帯の増加・・・夫婦双方の勤務地に近いエリアを選ぶ世帯が増加
「住宅を購入することに決めた理由」で、住宅の立地環境を選んだ人は、6割を超えています。
③リフォームできるから
既存住宅に決めた理由の3番目に挙げられているのが、「リフォームによって快適に住めると思ったから」で、2017年の調査では31.6%の人が選んでいます。中古住宅を購入して、自分のこだわりを反映したリノベ住宅への人気も依然として高いものがあります。
現在の日本の住宅事情では、高年齢世帯が100㎡以上の広い住宅に住んでいる割合が高くなっています。若年層と高齢者層では、リフォームの目的が異なっています。若年層では、子供の成長や世帯人数の変化に伴うリフォームの割合が高く、高齢者層では、住宅の老朽化に伴ってバリアフリー化のリフォームが高い割合を占めています。
リフォームは誰がする?
中古住宅市場では、リフォームへの需要が高いことは明らかなようです。しかし、基本的にはリフォームは購入者が自分の生活スタイルに合わせておこなうことが多い傾向にあります。リフォーム支援の措置が、国や地方自治体によってとられていますが、支援対象は、本人が居住する住宅に限られていて、売却目的でおこなったリフォームは対象に含まれていません。
例えば、住宅の増改築やリフォームをする際のリフォームローンの一部は所得税の控除対象になりますが、自分が住んでいる住宅におこなったリフォームのみです。バリアフリーや省エネリフォームをおこなった際には、固定資産税の3分の1を軽減される措置がありますが、それも、自宅の固定資産税が対象となります。贈与税の非課税枠の拡大も、自宅のリフォームをおこなった場合で、要件に、「自ら所有し、居住する住宅であること」と規定されています。
売却前にリフォームをすべき?
売却後に新しい所有者がリフォームをするのであれば、売却前にリフォームする意味はあまりありません。住宅のリフォームをするなら、購入後に居住者がおこなった方が、次の2点の理由からメリットが大きいと思われます。
①自分のこだわりに合わせたリフォームが可能になること。
②税法上の優遇措置などが取れて経済的にもお得なこと。
しかし、一方で、上述の資料によると、2017年の調査で中古住宅を購入した理由の5番目に「外装、内装、水回り等がリフォームされており、きれいだったから」が挙げられています。ほぼ4人に1人がこの項目を理由として選んでいます。
リフォームをするなら費用対効果を考える
売却予定の住宅のリフォームをした場合、税法上の優遇措置は得られず、リフォームにかけた金額をそのまま売却価格にのせられるわけでもありません。住宅価格には相場がありますから、相場以上の金額で売ろうとしてもなかなか売れないからです。売却前にリフォームをする理由は、購買意欲がわくようきれいにして売ることではないでしょうか。そうであれば、大掛かりなリフォームをするのではなく、売却につなげられる程度であまり費用を掛けないリフォームを目指すといいかもしれません。
購入者が気にする場所をリフォームする
リフォームで最も多いのが、キッチン、トイレといった水回りのリフォームです。戸建て住宅でも、マンションでも傾向は変わらず、設備のリフォームの80%近くが、「台所・便所・浴室等の設備」の改善となっています。
自分が家を見に行った時にも、最も気になる場所はキッチンやお風呂場、トイレといった水回りの使いやすさときれいさだと思います。特に、トイレに関しては、他の人が使っていたものを使い続けることに対する抵抗のようなものを感じる人が多いらしく、中古住宅を購入した後に取り換える割合も高くなっています。
トイレだけであれば、それほど費用がかかるわけでもないので、温水洗浄便座を新しくして、シンプルなリフォームをしておくと、購入意欲を持って訪れる見学者への訴求もしやすくなります。トイレは新しくしてあります、と言えて、見てそれがわかる状態であれば、入居した際に、真新しいトイレを安心して使えると、プラスに感じてもらえるかもしれません。
避けたいリフォーム例
一方で、避けたいのは壁や床の張替えといった大掛かりなリフォームです。壁紙やクロスの柄・色は、人によって好みが大きく分かれます。シンプルであまり主張しないものならいいと思われるかもしれませんが、自分の好きな色の部屋で暮らしたいという方もおられます。好みが反映される部分は、購入後にそこに住む方が変えられるようにしておいてあげるのも一つの手です。好みではない色に貼りかえられていて、その分お値段が上がっているとなると、購買意欲が下がってしまうかもしれません。
クリーニングはしておきたい?!
古くて汚いとなると、なかなか見学しても、購買意欲がわきません。古くても清潔であれば、そのまま住んでもいいと思えるかもしれません。この部分を変えたいといったリノベの意欲も、ある程度きれいな方が、湧いてくるのではないでしょうか。そのため、リフォームはしなくても、家のクリーニングは専門業者に頼んでやってもらうことをお勧めします。
特に、トイレや水回りは、どれだけきれいに使っていたとしても汚れが溜まる場所です。水回りの部分がきれいでピカピカだと、家の印象が変わってきます。リフォームまではできないという場合でも、クリーニングをしておくと、売却までの時間も短縮できるかもしれません。
仲介業者に相談する
リフォームをするかどうか、どのくらいのリフォームをすればよいのか、自分で判断が付かない場合、仲介業者に相談するのもお勧めです。仲介業者は、数多くの事例を見ていて、様々な分野に強いリフォーム業者も知っています。どういったリフォームが必要で、どのくらいのコストがかかるかを相談してみましょう。リフォームを実際にする前に、何社かの見積もりをとって比較しておくと、安心です。