不動産を勝手に売却されたくないと思っている相続人もいるのではないでしょうか。実は、不動産を勝手に売却されない方法があります。ここでは、基本的に相続させない方法、売却手続き中の場合の対応方法、すでに売却済みであった場合の対応方法、についてご紹介します。この記事を読めば、不動産を勝手に売却されない方法が分かります。
基本的に相続させない方法
遺産相続は親族同士が争うようになるとも言われていますが、可能な限り争うことがないようにしたいでしょう。ここでは、基本的に相続させない方法についてご紹介します。
死因贈与や遺贈で贈与する
死因贈与や遺贈などで相続財産の全てを別の人に贈与すれば、相続財産が無くなるため相続財産が相続させたい人に渡らないようにすることが可能です。しかしこの場合は妻などが持っている遺留分があるため、この遺留分を妻などから遺留分減殺請求されると、相続の最低限のものがなされてしまいます。遺留分の比率は直系尊属だけの相続人の場合は3分の1、これ以外の場合は2分の1です。そのためこの場合は、寄付や贈与で相続財産を処分しても遺留分減殺請求権がある相続人には、決まった比率の金銭を払う必要があることを把握しておきましょう。
遺言書で指定する
被相続人に複数の子供がいる場合や配偶者が生存している場合は、相続する金品の比率を遺言書で指定することができます。財産を相続させたくない場合は、相続分はゼロ、相続しないと指定することが可能です。遺留分請求権利が無い被相続人の兄弟姉妹についてはこの方法は有効で、兄弟姉妹以外に相続財産を相続することや兄弟姉妹には財産を相続しないと書いておくことによって、その人に相続させないことができます。
しかし、被相続人の配偶者・直系卑属・直系尊属の相続人が持っている遺留分まで侵すことはできません。被相続人の配偶者などが遺留分をもらう権利があるのはちょっと調べると分かるので、相続財産をもらえなかった配偶者などが確実に遺留分減殺請求をすると考えておきましょう。そのため遺留分減殺請求をされないように、遺言書によって遺留分の相当額を当該の相続人に渡すと書くのがおすすめです。
遺留分減殺請求権が法律によって与えられた相続人に、全く相続財産を相続させなと大変なことになります。そのため、遺言書で遺留分の金額に相当する最低額の相続を書いておきましょう。もともとの相続額と比較すれば遺留分の方の金額が低くなるので、できるだけ相続させたくなければこの方法が有効です。
相続権を廃除する
相続権の廃除というのは、相続権を相続財産を相続させたくない相続人から奪うものです。相続権の廃除は強制的に相続人の相続権を奪う強いものであるため、次のような条件を推定相続人がクリアしていないと利用できません。
- ・重大な侮辱や一方的な虐待を被相続人に与えた
- ・非行が著しい
このような条件をクリアする推定相続人がいる場合は、相続権を廃除することが可能です。相続権を廃除するためには、亡くなる前に審判を家庭裁判所へ申し立てる方法と、遺言書で書いた後に申し立てを遺言執行者が行う方法があります。
申し立てすると調停あるいは審判が行われ、相続権の廃除が認可されるかどうかが言い渡されるでしょう。例外としては家庭裁判所で推定相続人の相続権の廃除が認可されたが、この効力が代襲相続によって無くなることがあります。相続権の廃除でその相続人の相続権は無くなりますが、相続権を廃除された相続人の子供にはこの権利は引き継がれます。そのため相続させたくない相続人の相続権をせっかく廃除しても、意味がなくなってしまうことがあるでしょう。
欠格者に相続させない
相続欠格制度というのは相続が始まってから明らかな犯罪が相続人にあれば、相続権が無くなるというものです。欠格者とは、この際に相続権を無くした相続人のことを指します。先にご紹介した相続権を廃除する場合は被相続人の考えで相続権を奪うようになりますが、欠格者に相続させない場合は被相続人の考えとは無関係に相続権を奪うことが可能です。相続人が民法で決められている相続欠格事由に当たる次のような行いをした場合は、自動的に相続権が奪われます。
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- ・意図的に被相続人、先や同じ順位の相続人を殺したり、殺そうとしたりして処罰された
- ・被相続人が殺されたことが分かっても、告発や告訴をしなかった
- ・脅迫や詐欺によって、被相続人が遺言書を作ったり、変えたり、取り消したりすることを妨害した
- ・脅迫や詐欺によって、被相続人が遺言書を作ったり、変えたり、取り消したりさせた
- ・被相続人の遺言書を破棄・偽造・隠匿・変造した
このような行いがあれば、自動的に該当者は相続権が奪われて欠格者になります。
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売却手続き中の場合の対応方法
売却手続き中の場合は法務局で不動産の不動産登記事項証明書を入手し、不動産の持ち主が現在誰になっているかをチェックすることが大切です。
まだ不動産の相続登記がされていない場合
ここでは、不動産の名義が亡くなった父親のものとしましょう。登記事項証明書をまず法務局で入手して不動産の持ち主がまだ父親のままの場合は、不動産が相続財産になるため全ての相続人が共有できるようになります。よって全ての相続人が共有している状態の場合は、1人の相続人を無視して不動産を勝手に売却できません。なお印鑑カードと実印を、念のためにしっかり管理するようにしましょう。というのは印鑑カードと実印があれば、虚偽に登記されるリスクがあるためです。
すでに不動産の相続登記が済んでいた場合
相続登記が別の相続人名で行われていた場合は、相続登記の処分禁止の仮処分と抹消の訴訟を最終的に行うことを考慮する必要があります。よって相続登記された経過を、まずは調査することが必要です。この場合は事情を母親や別の相続人に聞いたり、相続登記がされた法務局に行って申請資料をチェックしたりするなどして、裁判するかどうかを見極めましょう。なお母親名義で相続登記がされていた場合は事情を母親に話して、母親が不動産を全く売るつもりが無い場合は、絶対に実印や権利証を別の相続人に渡さないように言う必要があります。
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すでに売却済みであった場合の対応方法
相続トラブルでよく起きるのがなかなか遺産分割協議がまとまらないため1人の共有相続人が、共有不動産を別の相続人の了解を得ないで自分の名義に勝手に変えて、第三者に勝手に売却するようなケースです。このような場合に全く知らないで不動産登記に書いてあることを信用して買った第三者と、もともとの持ち主である別の共有相続人でトラブルが発生します。
しかし法律上は、共有相続人の中で勝手に不動産を売却した人の持分以外に関しては権限が全く無い人が売却しているので、この部分に関しては第三者に対してもともとの持ち主は移転登記抹消請求ができるようになっています。そのため勝手に不動産が売却された場合は、自分の持分に関しては取り返せるようになります。
これは逆に言うと、売却された持分の中において勝手に売却された人の持分に関しては、売買が有効なものになります。そのため、不動産に関しては、第三者と共有相続人が共有する状態になっています。このような状態になれば、売却価格することは非常に難しくなります。