埼玉県の相続した一戸建て(築古・中古)、マンション、土地それぞれの売却相場と動向について2023年全般の動向を振り返りつつ、売却市場の特徴や2024年以降の予測を解説しています。
コンテンツ
1.埼玉県 中古一戸建て売却の2022年から現在までの売却動向と2024年以降の予測
・埼玉県 中古一戸建ての売却価格推移
【表 2022年~直近の一戸建ての売却価格推移(単位:万円/月)】
2022年はこれくらいで売れました
仲介 2,538万円で売れました
買取 1,777万円で売れました
2023年はこれくらいで売れました
仲介 2,597万円で売れました
買取 1,818万円で売れました
今これくらいで売れています
仲介 2,532万円で売れました
買取 1,772万円で売れました
・埼玉県 売れた中古一戸建ての特徴を比較
埼玉県で売れた中古一戸建ての特徴を、年次で比較します。
2022年から2023年は大きな変動はありません。
埼玉県では、「築22年」「建物面積100㎡」「土地面積145㎡」前後の中古一戸建てが引き続き売れやすいでしょう。
【埼玉県で売れた中古一戸建ての特徴 年次推移】
売れた特徴 |
2023年 |
2022年 |
---|---|---|
築年数(平均) |
22.43年 |
22.4年 |
駅徒歩(平均) |
14.26分 |
14.85分 |
建物面積(平均) |
102.72㎡ |
103.43㎡ |
土地面積(平均) |
147.11㎡ |
147.28㎡ |
価格(平均) |
2,597万円 |
2,538万円 |
最寄駅 |
蕨駅 |
蕨駅 |
参照: 国土交通省 不動産情報ライブラリ
・2024年以降の一戸建て(築古・中古)需要予測
ずばり!
埼玉県の中古一戸建て需要は
- 「さいたま市」では交通の利便性が高まり、今後「緑区」や「岩槻区」での一戸建て需要が高まる可能性が高いです。
- 「県央地域」での需要が高まっていくことが予想されます。
「鉄道の延伸計画」による住宅需要に注目
東京への通勤に便利な「さいたま市」や蕨市などの「南部地域」、三郷市や越谷市などの「東部地域」では継続した需要が見込まれます
特に、今後注目が高まっていくと予測されるのは、さいたま市の 「緑区」から「岩槻区」にかけてのエリアです。
理由として 「埼玉高速鉄道線の延伸計画」に該当する地域であることが挙げられます。
埼玉高速鉄道は東京メトロ南北線と乗り入れているため、延伸されると東京までのアクセスが大幅に短縮され、利便性が高まります。
岩槻駅から浦和美園駅の間に新駅が2つ開業予定であり、延伸されると沿線地域が発展し、住宅需要も高まると予測されます。
ただし、現段階ではかなり不透明な計画であるため、今後注視していくと、家を高く売却できるタイミングを見極める良い材料となるでしょう。
参考:さいたま市 都市戦略部 未来都市推進部|地下鉄7号線 延伸計画
「県央地域」で高まる中古一戸建て需要
埼玉県の住宅需要は南部だけではありません。
今後、中央に位置する「県央地域」でも需要は集まると予測できます。
利便性の高い南部地域や東部地域よりも中古住宅価格が安いわりに、東京へのアクセスが悪くなく、「県央地域」に位置する「上尾駅」や「桶川駅」近辺でも一戸建ての取引が多く見られています。
実際に両駅が位置している上尾市、桶川市ともに2024年の地価公示を見ると上尾市は1.8%、桶川市は1.2%と地価が上昇しています。
また、上尾市は「ブリジストン リサイクル株式会社」や「UDトラックス」といった大手企業の本社があり、そこに勤務するファミリー世帯からの需要が高いです。
加えて、桶川市は地域の住環境の向上を図るため、住宅リフォームを行う際の補助金制度を実施しており、市民へのサポートが充実しています。
以上のことから、「県央地域」の一戸建て需要は今後の高まりが期待できます。
参考:埼玉県庁 企画財政部 土地水政策課|令和6年地価公示のあらまし
参考:桶川市 産業観光課|令和6年度桶川市住宅リフォーム資金補助金のお知らせ
2.埼玉県 中古マンション売却の2022年から現在までの売却動向と2024年以降の予測
・埼玉県 中古マンションの売却価格推移
【表 2022年~直近の中古マンション販売価格推移(単位:万円/月)】
2022年はこれくらいで売れました
仲介 2,744万円で売れました
買取 1,921万円で売れました
2023年はこれくらいで売れました
仲介 2,868万円で売れました
買取 2,008万円で売れました
今これくらいで売れています
仲介 3,036万円で売れました
買取 2,125万円で売れました
・埼玉県 売れた中古マンションの特徴を比較
埼玉県で売れた中古マンションの特徴を、年次で比較します。
2022年から2023年にかけての中古マンション平均売却価格は上昇傾向にあります。
「築年数」「専有面積」といった条件面は大きな変動はなく、売却価格だけが前年比で124万円上昇しました。
また、売却しやすい中古マンションは「築25年」「駅徒歩10分」「専有面積68㎡」前後といった条件が挙げられます。
【埼玉県で売れた中古マンションの特徴 年次推移】
売れた特徴 |
2022年 |
2021年 |
---|---|---|
築年数(平均) |
25.19年 |
24.7年 |
駅徒歩(平均) |
10.31分 |
9.95分 |
専有面積(平均) |
68.09㎡ |
68.13㎡ |
価格(平均) |
2,868万円 |
2,744万円 |
最寄駅 |
川口駅 |
川口駅 |
参照: 国土交通省 不動産情報ライブラリ
・2024年以降の中古マンション需要予測
ずばり!
埼玉県における中古マンション需要は、
- 2024年以降も堅調に推移するでしょう。
- 埼玉県南部地域、特に「川口市」では引き続き需要が集まると予測できます。
埼玉県全体で高まる中古マンション需要
中古マンションの販売推移を見ると2024年は過去2年よりも高い水準を保っており、埼玉県全体でマンション需要は高いといえます。
なかでも、さいたま市・川口市・蕨市・戸田市の埼玉県南部で需要が高く、中古マンション取引の約4割以上を占めています。
また、埼玉県民は住宅を購入する際、マンションなどの集合住宅を選ぶ傾向が強いことも、中古マンション市場を考える上で重要です。
【持ち家比率と持ち家の内訳】
埼玉県 |
全国平均 |
|
---|---|---|
持ち家比率 |
65.7% |
66.3% |
一戸建て比率 |
54.8% |
64.4% |
集合住宅比率 |
43.5% |
32.7% |
参考:総務省統計局|社会生活統計指標 −都道府県の指標− 2023
埼玉県の県民性も追い風となり、東京のベッドタウンとして人気を集める上記エリアは、2024年以降も安定した需要が続くと見られます。
川口市で進む都市開発
川口市の人気は高まり続けており、人口は2023年から2024年にかけて埼玉県内2番目の上昇率を誇っています。
また、埼玉県の中で中古マンション取引が多くされている最寄り駅も「川口駅」です。
川口市は都市化に向けた動きが活発で、特に川口駅周辺での再開発計画が目立ちます。
例えば「川口本町4丁目」の再開発事業では川口駅東口周辺に位置する老朽化した密集木造住宅や旧耐震共同住宅などが混在した区域の再開発を行っています。
この事業では土地を合理的に活用し、都市機能の充実を図ることを目的としており、地上28階・地下1階の複合型マンションの建設を計画されています。
上記のように都市化が進み、利便性の高い川口市では、新築マンションと並行して中古マンションの需要がさらに高まると予想されます。
資材価格の高騰により、新築マンションの建築コストが全国的に上昇し、特に東京都内では新築マンションの購入が難しくなっています。
そのため、購入者層は価格的に手頃な東京都に隣接する地域の中古マンションにシフトしており、この市場環境の変化が川口市における中古マンションの需要を一層押し上げる要因となるでしょう。
参考:川口市|川口駅まちづくりビジョン 概要版
参考:三井不動産レジデンシャル株式会社|「川口本町4丁目9番地区第一種市街地再開発事業」権利変換計画認可のお知らせ
3.埼玉県 土地売却の2022年から現在までの売却動向と2024年以降の予測
・埼玉県 土地の売却価格推移
【表 2022年~直近の土地の売却価格推移(単位:万円/月)】
2022年はこれくらいで売れました
仲介 2,403万円で売れました
買取 1,682万円で売れました
2023年はこれくらいで売れました
仲介 2,672万円で売れました
買取 1,870万円で売れました
今これくらいで売れています
仲介 2,594万円で売れました
買取 1,816万円で売れました
・埼玉県 売れた土地の特徴を比較
埼玉県で売れた土地の特徴を、年次で比較します。
2022年から2023年にかけての平均売却価格は200万円以上も上昇しています。
理由としては前年よりも広い「面積」の土地が好まれたことが挙げられます。
また、過去2年とも「熊谷駅」に近い土地は人気だったため、「熊谷駅」周辺の土地は引き続き人気が継続するでしょう。
【埼玉県で売れた土地の特徴 年次推移】
売れた特徴 |
2023年 |
2022年 |
---|---|---|
駅徒歩(平均) |
14.26分 |
14.44分 |
面積(平均) |
182.33㎡ |
176㎡ |
価格(平均) |
2,672万円 |
2,403万円 |
最寄駅 |
熊谷駅 |
熊谷駅 |
参照: 国土交通省 不動産情報ライブラリ
・2024年以降の土地需要予測
ずばり!
埼玉県の土地需要は
- 東京都に近い埼玉県南部は2024年以降も人気が継続するでしょう。
- 「東松山市」「熊谷市」で需要の高まりを見せています。
埼玉県南部の東京都寄りエリアは引き続き堅調に推移
埼玉県では東京寄りの「さいたま市」「川口市」「蕨市」といった南部の地域で土地需要が高いです。
なかでも近年注目されているのが蕨市です。
2024年の地価公示を見ると、蕨市の住宅地の地価が前年比6.2%上昇しており、この数値は埼玉県トップの上昇率でした。
さらに、2023年から2024年にかけての人口増加率も県内で一番だったことから人気が高まっていることが分かります。
蕨市では区画整備や再開発事業を積極的に行い、住みやすい街づくりを目指しています。
例えば、錦町地区で行っている「錦町土地区画整理事業」では都市計画道路や河川、公園等の公共施設を整備・改善し区画を整え、利用価値の高い宅地を増やすことを目的としています。
また、「蕨駅西口再開発事業」も進行中です。
取り組みとしては、駅前広場の再整備や蕨駅西口7番街区に連続するプロムナード(遊歩道)の整備などが挙げられ、蕨の玄関口として、より魅力のあるまちづくりが行われています。
参考:埼玉県庁 企画財政部 土地水政策課|令和6年地価公示のあらまし
参考:埼玉県庁|埼玉県推計人口(月報データ)
参考:蕨市役所|錦町土地区画整理事業
参考:蕨市役所|蕨駅西口のまちづくり
南部地域以外でも高まる土地需要
土地需要があるのは東京に近いエリアだけではありません。
「東松山市」や「熊谷市」でも現在、土地需要の高まりを見せています。
東松山市では、高坂駅周辺の土地が多く取引されていました。
高坂駅周辺は、旧国道(407号)が地区内を縦断するなど恵まれた交通条件にあるため農地の宅地化が進んでいる地域です。
また、「高坂駅東口第一土地区画整理事業」を行い、道路・公園等の公共施設の整備改善を行い、良好な居住環境の形成を図っていることから、今後も需要が見込めるでしょう。
さらに、東洋経済新報社が行った「住みよさランキング」で東松山市は埼玉県で2022年から2024年まで3年連続で第1位を獲得しており、人気のエリアとなっています。
熊谷市は埼玉県北部、東京都心から離れた50km~70km圏に位置していますが、「熊谷駅」はJR高崎線と上越・北陸新幹線が通り、新幹線を利用すれば東京駅まで40分程で行けます。
東北道・関越道のインターチェンジへも30分程度とアクセスが良好なため、住みやすさは県内でもトップクラスです。
熊谷市の地価は+0.4%と埼玉県北部ではトップの上昇率であり、多くの土地取引が行われています。
2024年以降も堅調に推移するでしょう。
参考:東松山市役所|高坂駅東口第一土地区画整理事業
参考:東松山市役所|住みたい
4.埼玉県の不動産市況に関連する重要マクロデータの推移
・人口推移について
緩やかに進む人口減少
埼玉県の令和6年9月時点での人口は732万9,730人となっており、前年同月比で2,184人減少という結果になりました。
埼玉県の人口はやや減少傾向にあることが分かります。
ただし、さいたま市や蕨市といった東京都に近いエリアの人口は堅調に推移しています。
また、埼玉県が出している予測では、2040年に人口は700万人を割るまでに減少するとしており、現在、増加傾向にある市区町村でもいずれは減少に転じると考えられます。
・人口増加率について
人口減少の市区町村は半分以上を占める
2024年9月時点の埼玉県の人口増減率は前年同月比「-0.03%」です。
前年比で半分以上の市区町村が減少傾向となっており、人口減少は大きな課題となっています。
【埼玉県内の増加率ベスト5】
順位 |
市区町村 |
増加率 |
---|---|---|
1位 |
蕨市 |
1.24% |
2位 |
朝霞市 |
0.69% |
3位 |
八潮市 |
0.58% |
4位 |
さいたま市 |
0.47% |
5位 |
和光市 |
0.39% |
【埼玉県内の減少率ワースト5】
順位 |
市区町村 |
減少率 |
---|---|---|
1位 |
東秩父市 |
-3.00% |
2位 |
長瀞町 |
-2.39% |
3位 |
小鹿野町 |
-2.38% |
4位 |
秩父郡 |
-2.14% |
5位 |
横瀬町 |
-1.94% |
・年齢構成について
止まらない少子高齢化
埼玉県の年齢構成は以下のとおりです。
【年齢3区分別人口の比較】
年齢3区分別 |
2020年10月 |
2010年10月 |
---|---|---|
年少人口 |
85万8,384人 |
95万3,668人 |
生産年齢人口 |
433万5,188 |
474万9,108人 |
老齢人口 |
193万万4,994人 |
146万4,860人 |
日本全体で進行中である少子高齢化は、埼玉県でも大きな課題となっています。
2020年の国勢調査によると「老年人口」の割合が多いエリアは東秩父村(46.5%)、鳩山町(45.9%)、長瀞町(39.7%)となっています。
東秩父村、鳩山町、長瀞町は全て人口も減少傾向にあることから、人口減少が進むエリアでは老年人口の割合が高い傾向にあるといえます。
・世帯数について
埼玉県の世帯数は令和6年9月時点で331万8,077世帯となっており、前年同月比で4万5,117世帯増加しました。
この傾向は1年だけに限ったものではありません。
10年前の2014年と比較すると以下のとおりです。
【世帯数及び1世帯あたりの人員の比較】
2024年 |
2014年 |
|
---|---|---|
世帯数 |
331万8,077世帯 |
293万8,728 世帯 |
世帯当たり人員 |
2.21人 |
2.46人 |
2014年から2024年の10年間で37万9,349世帯増加しました。
しかし、一世帯あたりの人員は減少しており、単身世帯や核家族の増加が考えられます。
参考:埼玉県庁|埼玉県推計人口(月報データ)
参考:埼玉県庁|埼玉県の将来人口の推計
参考:埼玉県庁|令和2年 国勢調査 人口等基本集計結果(確報値) ~埼玉県の概要~
参考:埼玉県庁|平成22 年国勢調査 人口等基本集計結果