不動産を売却するという経験は生涯でそう何度もあることではなく、 多くの方は未経験なのではないでしょうか。不動産売買の現場ではとても大きなお金が動きますから、全く知識を仕入れることないままにその時を迎えてしまうのは危険です。そのような事態にならないように、今回は不動産売却時におけるメリットやデメリット、そしてリスクについて解説させて頂きます。
不動産売却のメリットとは
最初に、不動産売却のメリットについて解説いたします。箇条書きでまとめると、以下のようなものが挙げられます。
・現金化ができる
・固定資産税・都市計画税が少なくなる
・火災保険料・地震保険料・ローンの保証料などが返ってくる
・所得税と住民税を軽減できる可能性
まずは何より「現金化できる」ということです。人口減少時代、不動産を所有し続けることは必ずしも良い戦略ではありません。これからは、よっぽど良い土地でなければ価格の値上がりは望めないでしょうし、現在、使用していない土地や不動産であれば、早めに売却して現金化しておいた方が良いというケースも多いはずです。現金化した後に、株式などのもっと流動性の高い資産に移すというのも良いかもしれません。
「売却すると戻ってくるお金」があることもメリットです。不動産というのは、保有しているだけで固定資産税や都市計画税、そして建物のメンテナンス費用がかかります。たとえ使用していなくとも、維持していくだけで高いお金が必要になってしまいます。売却をすれば、これらの税金を支払う義務は消失しますし、固定資産税などは、場合によっては支払いすぎた分を返戻されることがあるのです。
これらの税金は1月1日時点の所有者に1年分の納税義務がありますが、売主が事前に1年分の税金を支払っていた場合、年内に売却をした際に、買主が引き渡し日以降の期間の分を日割りで計算し、売主へ支払います。つまり売主側からすれば実質的に、「払いすぎた税金が戻ってくる」ということになるのです。
ちなみに、例えばマンションの修繕積立金や管理費なども、前もって数ヶ月分支払っていたなどの場合には、引き渡し日を基準にして日割り計算ののち、買主側から売主へその差分の代金を支払うことになります。また、売却をすると、不動産に掛けていた火災保険の保険料や住宅ローン保証会社に支払っていた保証料が返却されることもあります。
例えば火災保険の場合ですが、新築住宅を購入した際に「30年契約の保険掛け金30万円」を一括で先払いとします。その物件を10年後に売却したとすると、返戻金の額は20万円となります(厳密には、そこから解約手数料が引かれます)。
計算式としては、
保険料300000円÷契約年数30年=1年の保険料が10000円
残りの契約年数が20年×年間保険料10000円=返戻金が200000円(-解約手数料)
といった形になります。
住宅ローンの保証料についても、一括で支払っている場合には、残っている期間については払い戻しがあります。保証料とは、住宅の買主が住宅ローンを支払えなくなった場合に、保証会社が代わりに銀行へローンを支払う、という仕組みの保険です。これらを受け取るためには手続きが必要ですので、忘れずに申請しましょう。
また、家を売却して損失が出た場合、所得税と住民税を節税することができます。これは「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」と呼ばれています。どんなマイホームでも売却して損失が出れば対象になるというわけではなく、諸々の要件に当てはまる場合にのみ使用できる特例です。
不動産売却のデメリットとは
それでは、逆に売却のデメリットとはどのような事が挙げられるでしょうか。不動産とは一つとして同じものがないといわれています。マンションの構造や機能などは似通ってしまうものの、土地が唯一無二の特性を持っているからです。
つまり、一旦、ある不動産を手放してしまうと、全く同じものを手に入れることは難しくなるのです。また、売却すると、その売却額がそっくりそのまま懐に入ってくるとイメージしがちですが、その所得から仲介手数料や譲渡所得税、諸々の費用が引かれて残った金額が手取りとなります。もちろん、新居へ移動する際の引越し費用などもかかります。
したがって、「譲渡に係る各種の費用」の存在はデメリットの一つといえるでしょう。例えば、不動産には抵当権が付随していますが、売却する際にはその抵当権を消失させる登記が必要になります。
これを「抵当権抹消」といいますが、これを行わない限り、物件を売買することができません。この手続きにかかる費用として、「司法書士への報酬費用」と「登録免許税」があります。
司法書士への報酬費用は、5000円から1万円程が相場となっており、登録免許税は、不動産の数×1000円と決まっています。不動産の数というのは建物の数ではなく、土地と建物は別々にカウントされることに注意です。つまり一戸建てを売る場合は、土地を合わせて2000円ということになります。
不動産売却のリスクとは
最後に、売却する際のリスクについてご説明します。不動産の価格というのは日々変動しており、タイミングを間違えると大きく損をしてしまいます。素人で不動産の価格を正しく判断するというのは大変難しく、査定された価格が妥当なのかを見抜きにくいリスクが挙げられます。
したがって、プロに価格を査定してもらう前に、自分自身でもある程度のリサーチをしておくことが大事です。周辺の物件の価格推移のデータであったり、過去の取引データ、公示地価や路線価、固定資産評価額などはネット上で公開されているものも多く、素人の個人でも調査が可能です。不動産の価格というのは多面的に決まるため、ウェブ上の様々なデータを常にチェックすることが重要です。
また、一軒だけでも大きなお金が動く不動産という特性上、流動性のリスクがあります。株式などと違い、売却をしたいからといってすぐ売れるとは限りません。そして、なかなか買い手が現れない場合は、徐々に価格を下げていかざるを得ません。最悪の場合、売却ができない、というケースも十分考えられます。また、無事に売れたとしても、売却後、引き渡した後に瑕疵(不具合・欠陥)が見つかった場合、契約を解除されるリスクや、損害賠償を請求されてしまうこともあります。
構造の劣化やシロアリ、雨漏りなどが代表的な瑕疵ですが、売主側が物件の状況を把握せず、もしくは仲介をした不動産会社が見落としてしまってトラブルになってしまった、という事態も十分に想定できるでしょう。このように、売却の際には様々なリスクが潜んでいますので、事前にある程度の知識を付けてから臨みましょう。
まとめ
不動産を売却する際のメリットとデメリット、そしてリスクについてご説明させていただきました。不動産というものは、長いスパンで見れば、いつかは必ず手放すものですから、いつ売却すればベストなのかという時期を見極める力が必要になってきます。
売却をする際には様々な手続きや費用などが発生しますから、しっかり勉強をして、売却計画を考えておきましょう。